中学校の時、クラスで伝言ゲームをしました。
もう本当にうろ覚えですが、クラスの席は、8列ぐらいで、各列5,6人ずつぐらい?並んでいたように思います。
先生が、席の一番前の生徒達に、すべて同じ話をし、
(8列あったので、8人の子にすべて同じ話をし、)
それを、よーいドン、で、前の子が後ろの子にと順番に伝えていき、
列の一番最後の子が、聞いた話を発表する。
というゲームでした。
すると、これが、見事に、
各列の最後の8人の言うことが、バラバラ。
(同じ話を伝言しているはずなのに。)
「なんで、そんな話になるんだよ!」てきなことも多く、(笑)
(最後尾の人が発表した、伝言内容が、
「教頭先生が、オタマを持って、馬小屋で、泳いだ。」みたいな。(笑)
(しかも、各列でそれぞれ、したことが違う。みたいな)
それが、もう、おかしくて、爆笑で盛り上がりました。
各列の発表後、先生が、一番最初に伝えた話は、何だったのか、
答えを教えてくれるのですが、ほぼ、間違って伝わっていて、
何度かゲームをした中で、一度、
一列だけ奇跡的に、正しく伝わっていて、
逆に、正しく伝わっていたことが驚きで、記憶に残っています。
今から考えると、先生はそうして、どんなに正しく伝えようとしても、
伝言していけば、人の話には主観が入り、
正しくは伝わらないことが多い、ということを教えてくださったのだと思います。
人には、それぞれに潜在的に持っている「思い込み」があり、
心の中で、こうではないか?という色をつけて、話を聞いてしまう。
黒メガネをかけて、見れば、黒く映り、
青い眼鏡をかけてみれば、青く見えるように、
人から人へ伝言されると、その人数分だけの色がついてしまい、
伝わってきたことが、「本当に患者さんが思っていたこと、真意なのかどうか」は、疑問符が付きます。
一言だけでも直接、もう一度「自分で、直接患者さんに確かめる」、という自覚がなければ、正確には判断できない、と、その経験を元に、思います。
必ずしも伝言でなくても、直接したやり取りでも、
今まで一度も「誤解されたことがない」という人は、多分、ほぼいなく、
それだけ、人は、相手ではなく、自分のメガネの色、自分のその時持っている情報、自分の考えで、
相手のことを判断してしまうのだと思います。
さて、さらに人から聞いた情報は、
まず、「自分で直接見て聞いた情報なのか?、それとも、伝わって来た情報なのか?」という、認識を持ち、
常に、その(この情報は間違っているかもしれないという)自覚をもって、
真っすぐに、直接自分の目と耳でその人をみて、考えることが必要なのだと思いました。
ということで、今日は、医療の「情報の共有」について。
医療には、スタッフ間で情報を共有するというシステム、「情報の共有」があります。
「一人の患者様について、全員が知っている」というスタンスは、悪くありませんが、
その正確性については、常に自分の中で疑問符をもっていることが大切だと思います。
この情報の共有をなくすことは難しく、
初めから先生が直接、患者様を診るのではなくて、
まず、受付さんが、
「今日は、こういう主訴の患者様が予約に入られています」という情報を出し、
(伝言し、)
来られてから問診票を書いていただき、それをもとに、スタッフが、
「予診」を取ったりします。
(伝言し、)
伝言ゲームの短い患者様の場合も、この二つの伝言があって、
医師または、歯科衛生士がお会いすることになります。
「伝言ゲームは、ほとんど正確には伝わらない」、ということを体験すると、
この二つの間だけでも、患者さんの真意が違ってしまうことは、よくあることだと思います。
また、言葉以外でも、
大変危険なのは、印象。
例えば、スタッフの誰かが、
「あの患者さんは、うるさくて、細かいことが気になり、神経質で、文句を言う」と、感じたら、
その気持ちを、スタッフ同士に流して共有してしまうことが少なくないと思います。
ただの印象が、伝言により、真実として伝わり、
また、こういう(悪い)情報こそ、全員に広がって伝わりやすい。
そして、スタッフ間の円滑なコミュニケーションのために同調しやすい。
(仲間が嘘をつくわけがない、という「味方意識」が、
伝わって来た(自分が直接見ても聞いてもいない)情報を、鵜呑みにさせる)
例えば、その患者さんが文句を言った時、痛いといった時、
スタッフ全員が意識を共有して、「この患者さんは文句を言いやすい人、神経質な人」という気持ちで見てしまうのは、
本当に痛い場合にも、思い込みによる認識があるために、誤診にもつながりやすく、
「(本当だ、仲間のスタッフが言っていた通り)また、文句を言っている」などと思うと、ほぼ判断を誤り、危険だと思います。
人にはいろいろな側面があり、
一人のスタッフの何かが気に入らなくて、患者様が悪い態度を取り、
他のスタッフに対しては、そうするつもりがなくても、
情報として流れる時は、
「自分の態度も悪かった」という(自分自身のマイナスになる情報の)部分は一切伝達されず、
患者様の神経質で悪い態度だけが伝わります。
病院のスタッフ同士の情報の共有は、
一切、直接言い訳できない(スタッフ間のように身内ではないので話すこともない)外部の人間に対する、悪口。
というふうになることも多いので、気を付けたほうがいいと思います。
よく、火災発生を知らせるベルが鳴っていたのに、火災がひろがってしまった原因に、
「訓練だと思った」とか、「故障かと思った」というのがありますが、
警告を、警告として感じ取れなくなること。
(「調子が悪い」といっても、口うるさい人としか認識できなくなること)
医療の場合は、その原因が、「情報」(による思い込み)ということも多いので、
そこを、いつも立てわけて考えられるように、気をつけておくのはとても大切なことだと思いました。
スタッフ同士には、「この人が嘘をつくわけがない」という信頼関係があり、
そのため、流れてきた情報を鵜呑みしやすいのですが、
伝言ゲームは、どんなに正確に伝えようとしても、正しく伝わらない、
というのが、事実。
一人一人は真面目で、良い人で、誠実で、ウソをつく気がなく、正確に伝えようとしていても、
伝言は悪い方へ傾きやすく、ついには、全く違う話が流れる。
伝言とは、そういうもの。
なので、(信用できる)あの人の言うことだから信じる、
というのが、
結果として間違いになると思います。
流れてきた情報を他のスタッフが鵜呑みにし、その情報だけを頼りに行動すると、
本当に痛みのある時、異常のある時に、気づけないかもしれません。
医療はチーム、という名目の元に、
チーム全員が手を組み、
チーム全員が同じ感情を共有したら、
全員が、一緒に真実から目をそらし、誤り、冷静さを失っているのと同じ状態になることもあります。
そのスタッフがどんなにいい人であっても、心から信頼できる人であっても、
人間なので、ちょっとした加減で、間がわるかったり、
上手くいかなかったり、すれ違ったりということはあり、
それで患者さんへの誤解がおこったりすることもあります。
また、スタッフ同士の打ち合わせでも、
スタッフルームの中とか、患者様の聞いていないところ、時間で噂をしているから、患者様ご自身には分からないだろうと思うのは、完全に間違いで、
人は、自分の悪口やウワサ話に敏感で、
それがどこでいつ話されていることであっても、分かってしまうもの。
(ほぼ超能力にちかいぐらい分かる(笑)。 誰でも経験があるように思いますが、
自分が良く言われていない雰囲気は、確実に伝わります。)
情報の共有は、伝言ゲーム。
伝わってきた情報は、鵜呑みにしない。
その自覚をもって、接すると、いいと思いました。