以前の記事(歯科医院で「磨けてませんね」と言われる理由。 ポイントは「え? そこ?」(プロの常識は、非常識?) 「なぜ?歯が磨けていないと言われるのか?」)で書いたのは、
歯周病を予防、治療する「歯磨き」って、「どこを磨く」のか?
その答えは、まさかのココ。(ピンクの線)
↑ 上の写真の「ピンクの線」の部分についた歯垢を落とす。
「歯磨き」というと「歯」を磨くことをイメージするので、普通は、「白い歯の面」を磨こうとするのですが、
実は、歯科医院で、「汚れが残っているか」歯医者さんや歯科衛生士さんが注目しているのは、
患者さんの考えている「白い歯の部分」とは違う、
まさかのココだった!という記事。
(もはや「歯磨き」とは、ちょっと違うイメージかも。)
だいたい、歯の磨き方を習っていない時点で、最初から、
「歯と歯茎の境目」にフォーカスして、ここの汚れを落とそう!と、このピンクの歯垢を落とそう、と思う方は、わずか。
でも、歯周病を予防、治療するための、大人の年齢の歯磨きでは、「歯」つまり白い歯の全体」に目を向けて磨こうとするのではなく、
このピンクの線の部分に歯垢が残らないかを、ピンポイントで特に意識する。
(ここの汚れが落ちていると、歯科医院で褒められる)
という記事でした。(ただし、歯磨きで歯ぐきに弊害がでないように、歯科医院に行って直接、歯科医師や歯科衛生士さんに診てもらいながら磨き方を聞いて、指導の元に磨いてください。)
が、
実は、患者さんが歯の磨き残しをしてしまう理由は、このことだけではありません。
え? まだその先があったの?
というところですが、
あるんです。
正直、歯は意外に磨きづらい形をしていて、
「普通?に磨いていたのでは、高確率で磨けない」。
これを知っていると、知らないとでは大違い、で、
磨けるか、磨けないかの差が、ここで出やすいかも。
ということで、
歯周病を防ぐ歯磨きにも、虫歯予防の歯磨きにも、役に立つ知識。
今回は、それを解説してみたいと思います。
例えば、よく見る普通?の歯磨きで、歯に歯ブラシを当て、
そのまま歯ブラシを、後ろに動かし、
手前に動かします。
よくある、歯ブラシを、前後にシャカシャカ動かして磨いている動かし方なのですが、
今の歯ブラシが当たって、歯の磨けていた部分は、
「青い線の部分だけ」だったことが、分かりますか?
分かりやすく1本の歯で見てみると、
磨けているのは、ココだけ。
青い線の部分だけ。
「赤い部分が、磨き残し」ということになります。
さて、これを図に表してみると、
中学校の数学の教科書で習った、この図です。
なんか、みたことのあるような、ないような図形ですが(笑)、
つまりこれが、歯が磨けない理由。
『直線 ℓ が、円周上に接しているのは、「1点(P)」だけ』。
(つまり、磨けているのは、「1点(P)」だけ。)
どんなに円(歯)が大きくても、直線 ℓ (歯ブラシ)が長く(大きく)ても、
当たっているのは、1点の、点Pだけの範囲。
つまり、
「直線 ℓ を歯ブラシ」、
「円を歯」、と、当てはめて考えたとき、
直線(歯ブラシの面)がどんなに大きくても、円(歯)に接する面(磨けるところ)は、
もはや1点のみ、というぐらい少ない。
実際には、歯は完全な円ではなく、丸みを帯びた形、というだけであり、
しかも立体なので、「球」をイメージした方が磨きやすいかも。
歯ブラシも、ただの直線ではなく、ブラシ。立体でもあり、「点」というより面で、もう少し広い範囲が磨けますが、
分かりやすくカンタンに抽象化して書くと、こんな感じのことが、歯磨きの時に、口の中で起こっています。
(だから、歯を磨いているつもりで、歯ブラシを歯に当ててシャカシャカ大きく動かして磨いていても、実際に、歯ブラシと歯が接して汚れが落ちているのは、少ない範囲しか磨けていなかったりします。)
さて、多くの患者さんに、このことをお伝えしたいと思った場合、
「歯の形」を理解するのに、カンタンなのは、「抽象化」。
抽象的思考とは、重要なポイントのみを抜き出し、不要な部分は切り捨てて、物事を把握する思考のことだそうですが、
物事の本質をとらえるには、
この抽象的思考で、「これはどういう事なのか?」と、大切なことだけを取り上げ、不要な部分を切り捨てて考えてみると分かりやすいかもしれません。
ものスゴく真剣に、まじめに取り組むなら、
歯磨きの仕方を学ぶために、歯の一本一本の形について、正確に見て覚えていく、
そんな方法も、歯科医師や歯科衛生士になるには大切かもしれませんが、
とくに歯科で働く気もない場合、
正確におぼえる時間を手間を省き、究極、歯を磨くのに必要な形に抽象化してみるといいと思います。
ということで、私が勝手に考える、
歯磨きのために、把握すればいい、抽象化した「歯の形」は、
奥歯を一言でいうと、「球体」です。
(大胆すぎる、抽象化。(笑) 正解か?といわれると正しくはないと思いますが、
「患者さんは歯を磨いているつもりで、磨けていない」という歯科医院でのあるあるは、
つまりこういうことだと理解するには、分かりやすいと思います)
このイメージがあると、歯ブラシで今、どこか磨けているか?
そして、どこが磨けていないのか? の把握がしやすくなります。
(現実的に、歯が球体だというわけではなく、
「なぜ? 歯ブラシで歯が磨けないのか?」その理由にフォーカスして、重要なポイントのみを抜き出し、不要な部分は切り捨てて、物事を把握しようとすると、
その理由は、「人が思っているより、奥歯は球体の形にちかく、そのために歯ブラシが歯に接触して磨けている範囲が、とても小さいから」という意味です。)
歯を磨くときに、歯を、丸い球がいくつも並んでいる、数珠のような球体が、並んでいるイメージでとらえると、
なぜ? 磨き残しが多くでるのか? が、理解しやすいと思います。
もし、磨くのが、鏡を使わないと見えない自分の歯ではなく、
誰かが手首に巻くような、数珠だったら、
その数珠の表面についた歯垢(プラーク)を取ろうとするなら、
もし見えていれば、
歯ブラシを、球体の外側に真っすぐ当てて、前後にシャカシャカと動かすのではなく、
歯ブラシをちょっと傾けて、球体と球体の間にブラシの毛が届くように工夫すると思います。
実際に歯垢が落ちていて「磨けてますね」と歯科医院で言われる歯磨きには、
そういうブラシの当て方の工夫が必要だということです。
歯磨きをするときに、頭の中で、
歯を「球体がならんでいる」イメージでとらえ、それを磨いているのだという意識を持つと、
歯磨きをして歯の汚れを落とそうとするとき、
歯ブラシを当てて磨きながら、
「これでは、「歯と歯の間」の汚れが取れないな」とか、
(「球体と球体の間」)
「歯の根元まで、歯ブラシの毛先が当たっていない」
(球体の下の部分に歯ブラシの毛先が届いていない)
という、イメージが分かります。
歯磨きしていても、何となく、磨けていない気がする、
と感じる人は多いと思いますが、その感覚は間違いではなく、
歯ブラシの毛先の面の面積に対して、
歯ブラシの毛先が歯に当たっている面積は、非常に小さい。
( ↑ 歯磨きして磨いているつもりでも、実際に磨けているのは、青い線の部分だけ。)
歯間ブラシや、ワンタフトブラシなど、小さい面積のブラシを使うことで、
どこかに先に当たってしまい、その奥に毛先が届かない、ということが無くなり、
隅々まで磨けるようにする、という方法もありますが、
まずは、なぜ? 歯が磨けていないのか?
という原因を、 ↓ イメージで理解していただいて(実際に歯ブラシが当たっているのは一部)、その対策をした磨き方で磨くのが良いと思います。
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